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日銀のマイナス金利導入についてわかりやすく解説してみる

日銀がマイナス金利の導入を発表し、大きなニュースになりました。

これは日本経済にとっても、日本の銀行にとっても非常にインパクトのあることで、恐らく銀行の幹部は大慌てしているのではないでしょうか。発表と同時に銀行の株価は急落しました。

金利がマイナスってどういうこと?銀行に預金するとお金が減るの?なぜ金利をマイナスにするの?といった疑問を持っている方も多いと思うで、一応金融機関に勤めている身として、わかりやすく解説していこうと思います。

www3.nhk.or.jp

マイナス金利とは?

まず初めに、マイナス金利について簡単に解説します。

マイナス金利とは、読んで字のごとく金利がマイナスになることをいいます。普通なら、銀行に預けると金利が発生して利息がつきますよね。
マイナス金利はその逆で、お金を預けると利息を”とられる”のです。

たとえば、金利が年1%なら100万円を預けると翌年には101万円になります。しかし、金利がマイナス金利で年ー1%の場合、100万円を預けると翌年には99万円になってしまいます。

つまり、お金を貸すのに利息を逆に支払うというなんとも奇妙な事態になるわけです。
なぜ金利をマイナスにするのかについてはまたのちほど解説します。

今回のマイナス金利の対象について

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photo by 401(K) 2013

まず初めに、今回のマイナス金利は別にみなさんの預金を対象しているわけではないので安心してください。みなさんが銀行に対して利息を支払うことはありません。

では、今回のマイナス金利の対象とはなんでしょうか。

それは、銀行が日本銀行に預けているお金が対象になります。
正確には、これから銀行が日本銀行に対して預けるお金に対してー0.1%のマイナス金利が適用されます。

ちょっとわかくにりにくいですね。図で解説しましょう。

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  実は、私たちが銀行に預金しているのと同じように、銀行も日本銀行に預金をしています。銀行が日本銀行に預けているお金のことを日銀当座預金といいます。

当座預金は大きく分けて2つあります。法定準備金超過準備金です。

法定準備金

銀行は預金の一定割合を準備金として日本銀行に預けなくてはいけないことになっています。これを法定準備金(法定準備預金)といいます。この法定準備金は絶対に預けなくてはいけない預金です。この法定準備金には金利が適用されないため、利息も発生しません。

超過準備金

 超過準備金は法定準備金を上回って預けられたお金のことです。ざっくりいうと、ある銀行が法定準備金として100億円預金しなくてはいけない場合に200億円預金したとすると、法定準備金100億円、超過準備金100億円となります。現在、この超過準備金に対して日銀は年0.1%の金利をつけています。貸出や運用先が乏しい中、たとえ年0.1%であっても金利がつくため、日本の金融機関は莫大な超過準備を積み立てています。

今回マイナス金利が適用されるのは、今後金融機関が積み立てた超過準備に対してです。図でいうと、一番上の部分ですね。法定準備金とこれまで積み立てた超過準備に対しては今まで通りの対応となります。

なぜマイナス金利を導入したのか

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今後積み立てられる超過準備金に対してマイナス金利を適用するというのは、「これ以上当座預金を増やすな。自分で運用先を確保しろ」という日銀からのメッセージと読み取れます。

日銀がマイナス金利を導入した理由はいくつかありますが、インフレ率が目標に達しないこと、株式市場が大きく下落していることが主な理由でしょう。

理由①:インフレ率が低下している

1つ目の理由はインフレ率が低下していることです。デフレ脱却を目指し、日銀が年間物価上昇率2%の目標を掲げていると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

なぜ物価を上昇させたいのかというと、簡単にいえば物の値段が上がれば給料もあがって、経済の規模が大きくなるからです。今までの日本はデフレで物の値段も給料も下がり、経済成長も伸び悩んでいました。そこで安倍政権はデフレ脱却を目指し、物価を上昇させようとしているのです。

しかし、原油価格の下落によって最近の物価上昇が伸び悩んでいます。このままではデフレに逆戻りしてしまうかもしれない・・・そんな懸念があったのでしょう。

銀行が日銀に預ける超過準備金を減らして企業や個人への貸し出しを増やせば、世の中に流通するお金の量が増えます。お金の量が増えると、お金の価値が下がって物の値段が上がるというわけです。

理由②:株式市場が下落している

年明けから世界的な株安となっています。日本も例外ではなく、その下落スピードはバブルの頃を上回る異常事態となっています。この下落を食い止めるためのも、今回のマイナス金利導入の背景なのではないかと思います。

基本的に、金融緩和(金利を下げること)を行うと株式市場は上昇しやすくなります。理由はいくつかありますが、簡単にいえばお金を借りて株に投資をする人が増えたり、金利が低下することで金利収入の魅力がなくなり、株で資金を運用する人が増えるからです。

日本の株式市場の場合は輸出企業が多いので、金利が低下して円安になるのも株価の上昇要因になります。

今回、日銀がマイナス金利を導入したことで、日本の長期金利(住宅ローンや銀行借入の金利の基準となる金利)は過去最低を記録しました。その結果、日経平均株価は大幅反発、ドル円も円安方向に大きく動く結果となりました。

私たちの生活にどう影響するか

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 いまの段階で私たちの生活に大きく影響を与えるようなことはないと思われますが、もちろん影響が出てくる部分はあります。

それは銀行の貸出金利の低下です。現在、銀行は金利の低下によって融資から得られる収益が圧迫されています。特に地方銀行は地方経済の縮小と貸出金利の低下というダブルパンチを受けています。今回のマイナス金利でただでさえ低い金利がさらに低下し、状況が悪化することが想定されます。

マイナス金利発表直後に銀行株が一斉に売り浴びせられたのも、金利低下によって収益が圧迫されるのではないかという懸念があったためです。

逆に言えば、借りる人はもっと低金利でお金を借りることができるかもしれません。これから住宅ローンを組む人にとってはありがたい話です。

銀行マンにとっては更に苦しい時代になるかもしれませんね。

いかがでしたでしょうか。

日銀のマイナス金利の導入は日本経済にとっても大きなイベントです。
この機会に経済についてもう一度少し勉強してみるのも面白いかもしれません。