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【投資初心者向け】最低限知っておきたい投資信託の基礎知識

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 アベノミクスが始まって以降、個人の投資意欲が年々高まってきているようだ。それは当然といえば当然で、アベノミクスが始まってから日本株を買って放置していれば2倍になった訳で、むしろ貯金があるのに投資をしなかった人は人生に数回あるかないかのボーナス相場を見逃してしまった残念な人ということになる。


投資をする方法は色々あるが、一番簡単な方法は投資信託を買うことだ。アベノミクス以降、日本の投資信託市場は拡大を続けている。

ただ驚くべきことに、投資信託を買っている人でさえ自分が何に投資をしているかよくわかっていない人が非常に多いのだ。僕が金融業界に入って一番驚いたのが、日本人の投資リテラシーの低さである。

今回はこれから投資信託を買う人や、既に買っているがよく仕組みがわかっていない人向けに投資信託の基礎知識をレクチャーしていく。

目次
1.意外に知らない、投資信託とは何か
2.超重要!手数料は絶対確認しろ!
3.投資には2種類ある!インデックスとアクティブとは?
4.要注意!下手をすると大損する分配金の落とし穴

意外に知らない、投資信託とは何か

まずはじめに、投資信託とは何かということをもう一度おさらいしよう。投資信託とは、簡単にいえば自分のお金を運用のプロに預けて、自分の代わりに運用してもらうための商品で、運用を代行してもらう対価として手数料を支払う。たとえば、日本株投資信託を買えば、自分の代わりに運用のプロが日本株で運用してくれるという具合だ。

投資信託は銀行や証券会社で購入できる。しかし、ここで間違ってはならないのは投資信託の運用は銀行や証券会社が行っている訳ではないという点だ。実はここを勘違いしている人がかなりいるのだが、三菱東京UFJ銀行が販売している投資信託は別にUFJが運用している訳ではない。運用会社と呼ばれるいわゆる投資会社が運用しているのだ。投資信託の仕組みを簡単に示した図が以下である(わかりやすいように、かなり簡略化している。本当はもう少し複雑だが、こんなイメージだと思ってもらって問題ない)。

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個人が銀行や証券会社で購入した投資信託の申込金は運用会社へと委託され、そこで運用が行われる。そして、運用して得た収益はまた証券会社や銀行から個人投資家に支払われる。つまり、証券会社や銀行は中間業者であり、運用とは全く関係がないのである。

なぜ、運用会社ではなく銀行や証券会社が間に入るのかというと、全国に販売ネットワークを持っており、ブランド力もあるからである。そのため、コスト的にも販売力的にも銀行や証券会社に投資信託を売ってもらうのがいわば慣例となっている。

超重要!手数料は絶対確認しろ!

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投資信託を購入する際、あまりに多くの人が手数料を無視している現実に驚かされる。どれくらい儲かるかという点にのみ集中してしまい、手数料を全く気にしていないのだ。手数料の高さでパフォーマンス(収益率)は大きく変わってくる。そして、はっきりいうが、日本の投資信託の手数料はべらぼうに高いのである。なぜ日本の投資家がここまで手数料に無頓着なのかと正直理解に苦しむ。ここでは手数料について徹底的に解説していく。

手数料は2種類ある

投資信託の手数料には大きく販売手数料と信託報酬の2種類の手数料がある。それぞれ特徴があるのでその違いをしっかりと理解すること。

販売手数料

販売手数料は、投資信託を購入する時に銀行や証券会社に支払う手数料のことである。購入金額に対して数%発生し、投資信託や銀行によって手数料率は変わってくる。モーニングスター社によると、11年度の平均販売手数料率は2.73%であった。はっきり言うが、これめちゃくちゃ高いからね

販売手数料は投資信託を購入するたびにかかる手数料であるため、一度購入して保有し続ければ再度発生することはない。ただし、この販売手数料は銀行や証券会社にとって非常に大きな収益源となっている。そのため、この前購入したばかりの投資信託にいろいろとイチャモンをつけてすぐに売却させ、他の投資信託を購入させてまた販売手数料を稼ぐという「回転売買」が少し前まで当たり前のように行われていた

当然、購入するたびにべらぼうに高い手数料が発生するので投資元本はガンガン削られることになる。現在は政府主導でこの回転売買を禁止させる流れになっているが、一部ではまだ行われている。

ただ、最近はネット証券を中心に手数料無料の投資信託が増えてきている。手数料無料のことをノーロードといい、ノーロード投信とは販売手数料が無料の投信のことである。手数料が気になるなら、このノーロード投信を中心に探してみるといいだろう。

信託報酬

信託報酬はいわゆる運用報酬である。運用会社に支払う報酬だと思ってもらって構わないが、銀行や証券会社のような販売会社も信託報酬の一部を受け取っている。

この信託報酬の11年度の平均は1.48%である。これもかなり高い水準である

信託報酬は投資信託保有しつづける限り発生する手数料であるため、収益率に大きく影響する。販売手数料とあわせて、必ず確認するようにしたい。

日本の手数料はどれくらい高いのか

日本の投資信託の手数料はかなり高いことを紹介したが、ではどれくらい高いのか?
米国と日本の手数料を比べたのが以下のグラフである。

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出所:モーニングスター社のデータを筆者が加工して作成

日本の信託報酬は米国の約2倍、販売手数料についてはなんと3倍近くもするのである。基本的に、日本の投資家はぼったくられているということになる。

ではなぜ、日本の手数料はこんなにも高いのか。要因はいくつかあるが、中間業者である証券会社や銀行のコストが高く、マージンを大きめにとることが大きい。資料の費用やセミナーの開催などのコストが多く発生するのだ。

米国の場合、個人のファイナンシャルアドバイザーが投信を販売しているケースが多く、販売手数料が無料の場合も多い。日本は運用会社に支払う信託報酬の一部も銀行や証券会社に支払われており、運用会社が費用を回収しようとするとどうしても信託報酬も高くなってしまうのだ。

バカにならない手数料、収益にどれくらい影響するのか

では、手数料の違いが収益にどれくらい影響するのか見てみよう。
平均年率リターンを5%とし、日本と米国の手数料率を以下に設定した。
日本:販売手数料3%、信託報酬1.5%
米国:販売手数料1%、信託報酬0.8%
この数値を元に行ったシミュレーションの結果が以下のグラフである。

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投資元本1000万円を10年運用したとすると、なんと約130万円もの差が生まれた。ちなみに、20年だと約300万円、当初の元本対比で30%もの違いが生まれる。たった1~2%の違いでも、ここまで差が生まれるのだ。

いかに手数料が収益率に影響するかわかってもらえたと思う。投資信託を購入する際は、手数料についてもしっかりと確認してほしい。

投信には2種類ある!インデックスとアクティブの違いとは?

投資信託にも色々種類があるが、投資信託に限らず投資には大きく2種類ある。インデックスとアクティブである。インデックスとアクティブはそれぞれ全く異なる種類の投資であり、それぞれ長所と短所がある。投資を始めるうえで基本中の基本の知識であり、投資計画を組み立てる上で非常に重要な知識なのでしっかりと理解して欲しい。

インデックスとは?

インデックスとは、簡単にいえば相場全体の動きに連動する投資手法を指す。たとえば、TOPIX日経平均は日本の株式市場全体(東証一部)の動きを表す代表的な指数であるが、インデックス型の投資信託はこのTOPIX日経平均と同じような値動きをする投資信託ということになる。
つまり、日経平均が3%上昇すれば、日経平均をターゲットにしたインデックス型投信も3% 上昇するということになる。

長所インデックス型投信の長所は手数料が安いことだ。なぜかというと、指標に連動するように銘柄を定期的に見直すだけでいいのでコストがほとんどかからない。先ほど手数料の差が収益率の大きな差を生むと説明したが、市場全体が上昇している時は低コストのインデックスファンドでも高い収益を期待することができる。

短所:当然の話だが、インデックス型投信は相場全体に連動するので、相場が長期的に下落すると損をすることが多くなる。いくらコストが安くても、相場全体が下がれば嫌でも損をするので相場が長期的に停滞・下落してしまう場合は注意が必要だ。

インデックス型投信には日経平均TOPIX以外にも、米国株の代表的指数であるS&P500や新興国の株式指数に連動するものなどがある。自分がこれから上昇すると予想している国や地域の指数をターゲットにしたインデックス型投信を購入するのは賢い投資の1つといえるだろう。

インデックス型投信の代表的なものがETF(上場型投資信託だ。ETFとは上場企業と同じように上場している投資信託を指す。TOPIXに連動するETFを購入すれば、いわば日本株全体を買っているのと同じことになる。日本をはじめ、米国など複数のETFを組み合わせれば、低コストで自分の相場観が反映されたポートフォリオ(資産配分)を構築することもできるので、投資に慣れてきたらETFで自分オリジナルのポートフォリオを作ってみるのもいいだろう。

アクティブとは?

アクティブとは、インデックスとは逆に相場の平均以上のリターンを目指す投資手法のことである。相場が平均で3%上昇したのなら、5% の収益を目指すというのがアクティブ型投信ということになる。

長所:アクティブの長所は、相場の平均以上のリターンを目指すので、相場全体が下落してもプラスのリターンを得ることができることがあるという点だ。そのため、相場が長期的に下落しても、アクティブ型投信なら収益がプラスになることもある。

短所アクティブの短所は手数料が高いことだ。相場の平均以上のリターンを出すために銘柄を頻繁に入れ替えたり、調査を行うためコストがどうしても高くなってしまう。そのため、コスト以上の超過収益を上げないとインデックス型投信に収益率で負けてしまうこともある。

アクティブ型投信は市場平均以上のリターンを目指すが、実際には市場平均を下回ってしまうことが多いのも事実である。インデックスとアクティブ、どちらが優れているかという議論はここでは行わないが、過去の収益率などをしっかりと吟味して選択することが重要である。

 要注意!下手をすると大損する分配金の落とし穴

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多くの日本人投資家が勘違いし、損をしているのが投資信託の分配金である。投資信託で得た収益を受け取る方法は大きく2つある。

1つ目がキャピタルゲイン(値上がり益)であり、価格が上昇したところで売却して購入価格と売却価格の差益を得るものものである。

2つ目が分配金(配当金)を受け取る方法だ。これは投資信託保有したまま、収益を分配金として受け取る方法だ。

この2つ目の分配金については、日本の投資信託は世界的に見ても非常に特殊な形態をとっており、日本の投資家が損をしていることも多いのだ。ここでは分配金について徹底解説していく。

毎月分配型と1年決算型とは?

分配金の分配方法には何種類かあるが、大きく毎月分配型と1年決算型の2つがある。毎月分配型は毎月分配金を受け取れる方法であり、1年決算型は基本的に分配金は受け取れず、売却時のキャピタルゲインだけが収益となる。

日本で圧倒的に人気なのは毎月分配型である。毎月決まった分配金が支払われるためか、安定を求める日本人には非常に人気がある。

しかし、世界を見てみると、毎月分配型などやっているのは日本くらいなのだ。それも当然の話で、基本的に毎月分配は投資家にとっても不利なのである

毎月分配はなぜ不利か?

なぜか?毎月収益を確定したほうが、値下がりしたときに安心ではないかという考えがあるかもしれないが、これは大きな間違いである。


基準価額(投資信託の値段で株価のようなもの)1万円で投資信託を購入したとしよう。1ヶ月間ほとんど値動きがなく、1ヶ月後も基準価額は1万円であった。もしこのとき分配金を100円出すと、基準価額は9900円に下落してしまう。

なぜかというと、分配金は本来、投資の収益から出すのが筋である。しかし、その投資の収益が上がっていないため、当初の元本を取り崩して分配金に充てるのだ(元本を取り崩して分配金に充てることを特別分配という)。そのため、基準価額が下落してしまうのだ。手元には100円の分配金が支払われたが、基準価額が下がって100円の損を出しているため、結局損益はプラスマイナス0となる。

収益があがるどころか相場が下落してしまうと更に大変になる。損を出しているため当然基準価額が下落してしまうが、分配金を支払うために元本を取り崩すので基準価額は更に下落する。そうすると投資元本はどんどん目減りしていくことになる。

投資元本が目減りすると、その後相場が上昇しても十分な収益を上げることができない。たとえば、100万円を投資して株価が50%下落すると元本は50万円になってしまう。その後、たとえ株価が50%上昇したとしても、元本は75万円にしかならない。つまり、投資元本が目減りすると同じ値動きでも収益に大きな差が生まれてしまうのだ。

毎月分配型は構造的に投資元本が減少しやすいため、投資家にとって不利なのである
そのため、こんなものが大人気なのは日本くらいとなっている。

分配利回りが高い投資信託を選べばいいというのは死亡フラグ

毎月分配型が投資家に不利になりやすいという話をしたが、これと絡んで分配利回りが高い投資信託も要注意だ。

1年に支払われる分配金÷基準価額=分配利回り

 
つまり、分配利回りが50%なら2年で元本が倍になる計算である。とにかく分配利回りが高い投資信託を買う人が後を絶たない。

はっきり言うが、分配利回りが高い投資信託を買うことは手数料を支払って元本割れする可能性が高い超不安定な預金をして払い戻しを受けているようなものだ。

分配金は、投資で得た収益を分配するのが本来の姿だ。つまり、分配利回り50%なら、年率50%以上のリターンを毎年たたき出す必要があるという非現実的な利回りなのだ。

世界のどこを見渡しても、まともな金融商品で年率50%以上のリターンを出せるものなどないつまり、分配利回りが異常に高い投資信託は必然的に投資元本を取り崩して分配金として拠出しているということになる

ということは、異常に分配利回りが高い投資信託を買っている人は手数料を支払って、自分の資産の払い戻しを受けているだけなのだ。はっきり言って大損である。

にも関わらず、投資リテラシーが低い日本人投資家は分配利回りが高い投資信託に飛びついてしまうため、こうした高分配利回りの投資信託が非常に売れているのが現状だ。

分配利回りが高い投資信託=儲かる投資信託というのは大きな間違いなので、くれぐれも注意すること。

まとめ:投資をする前にちゃんと勉強しろ!話はそれからだ

多くの人がほとんど勉強もせずに投資を始めることが驚きだ。その結果、日本の個人投資家は金融機関や外国人投資家のカモにされることが多く、現在の日本の投資信託市場も大きく歪んでしまっている。

まともな勉強もしていないのに、金融機関に損をしたと文句を言うのは大間違いである。まずはしっかりと勉強をして、最低限の基礎知識を学んだうえで投資を始めて欲しい。

本当はもっと書きたいことが山のようにあるが、あまりに長くなるので今回は最低限知っておいて欲しい4つの基礎知識に絞った。今後も投資について色々と執筆していこうと思う。