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僕の外資金融就活日記 インターンシップ選考編1-1

僕は関西の二流私大(しかも文系)に通う大学生で、1年生の頃は必修科目も含めて単位を落としまくり、真剣に大学中退を考えたほどの落ちこぼれ学生。

そんな僕が複数の外資投資銀行インターンシップを経て、最終的に外資系金融機関への就職を決めるまでの10ヶ月間の記録を残しておきたいと思う。かなり長くなるので、いくつかのパートに分けた。今回はインターンシップの選考についての記録。

選考—面接1社目—

2013年、夏。常に銭湯のサウナにいるような猛烈な暑さの中、スーツを着込んだ僕はインターンの面接会場に向けて競歩選手並の速さで突き進んでいた。ニュースでは連日この異常なまでの猛暑でもちきりだった。店のショーケースに映り込んだ自分をちらりと見る。黒いジャケットに黒いズボンのダークスーツに身を包み、顔は汗だくでやつれている。まるで黒の海苔を巻いた干しぶどうみたいだ。もともと地黒なのもあって、干しぶどう化に一層の磨きがかかる。この日は外資投資銀行のサマーインターンの最後の面接が京都で行われる予定だった。

やっとついた面接会場には自分のように黒のスーツに身を包んだ就活生が何人かいた。お互い見知った様子で、仲良くおしゃべりに興じている。それもそのはずで、外資系や有名企業の最終選考の段階になると東大や京大、早稲田慶応といった有名大学出身の学生がほとんどになる。関西での選考だと、選考を受けにくる就活生の90%は京大生だ。この数値が正しいかは統計がないので分からない。しかし、室内に10人程いる就活生のうち、非京大生は僕だけだった。だから、この数値はこの場合は有効だったといえる。阪大生や神大生といった関西の他の有名国立大学の学生はあまり見かけない。彼らいわく、夏の段階では就活にはあまり熱心ではないらしい。

面接の控え室では最近購入したKindleを開き、事前にワードで作成してKindleに取り込んでおいた想定問答集を読む。それを見ながら、志望動機や自己PR、自己紹介をまるで呪文のように詠唱する。

「私が御社に志望したのは〜」

これを超小声、超高速で音読するのだから呪文と思われても仕方ないだろう。完全に危ない人だ。呪文を詠唱していると、面接会場の中から大勢の笑い声が聞こえる。人事いわく、かなりくだけた面接らしい。それにしても、待っている10分間のうち6〜7分は笑い声が聞こえる。吉本興業の面接かこれは。

そうこうしている内に自分の名前が呼ばれた。最初の面接は学生5人と面接官2人の集団面接だ。深呼吸をし、呼吸を整えてから部屋に入る。部屋にはカジュアルな服装をした面接官が2人座っていた。書き忘れたが、日系企業と違って外資系企業の選考は部門別に行われる。今回は債券部門の面接だった。いよいよ面接が始まる。

まず面接官2人が自己紹介を始める。それから時計回りに自己紹介をするように言われた。予想していた通り、かなりゆるい雰囲気だ。学生の自己紹介に面接官がとてもフランクに絡んでくる。学生がバイクが趣味ですというと、面接官もバイクの話を始める。しかし、このゆるい雰囲気に流されてはいけない。これは面接なのだ。面接というのは、必ず採点評価されているのだ。世間話をしてばかりで評価されるわけがない。自分の順番が回ってきた。まずは控え室で詠唱していた呪文を大きな声でゆっくりと再詠唱する。しかし、お堅い人間だと思われてもあれなので、ちょっとくだけた小話を最後にはさむ。
他の学生はまだ選考になれていないのか、本当に世間話で終わっていた。居酒屋アルバイトの話をダラダラされたところで、特にアピールするポイントもなければ評価のしようがない。強敵がいないのはラッキーだった。結局、その面接では自分ともう1人の京大生だけが通過した。

関西での選考ということもあり、次の面接は最初の面接の30分後にすぐに行われた。今度は面接官と学生の1対1の面接だ。今回も呪文の再詠唱を行う。まずまずの滑り出しだ。しかし、面接官のある質問に足下をすくわれた。

面接官「愛読書は?」

僕の名誉のためにも言うが、僕は2年半で300冊以上は読んでいて、人並み以上に読書している自信がある。しかし、この簡単な質問でつまずいてしまった。

僕「えー、えっと。。。」

結局、最近読んだ本の名前を苦し紛れにあげた。当然、なぜ愛読書なのかを説明しなくてはならないが、うまく説明できるわけもない。そう、人間というのは準備していなかった質問になかなかうまく答えられないものなのだ。驚く事なかれ、少なくない就活生が自己紹介できないのである。ここで得た教訓は、準備こそ全てだということだ。ゲームの勝敗は、ゲームが始める前に9割決まっているのだ。残りの1割は、いわゆる運だ。しかし、準備無くしてはこの1割の運すらも味方につけることはできないのである。

結局、その企業から採用の電話がかかってくることはなかった。

 書類選考

いきなり面接の話から始めたが、面接の前に当然書類選考が行われる。書類選考はおおまかに2つに分けられる。エントリーシートES)とWebテストや筆記テストといった能力試験だ。僕の通う大学は良い言い方をすると関西有名私大、悪い言い方だと二流私大だ。無論、一流私大とは早稲田や慶応といった最上位校である。だから、書類選考の段階で既にそういった最上位校の学生に比べて見劣りするのは事実だ。だから、ESは磨きに磨きをかけた。就活サイトに掲載されている「通過したES」集は僕にとってのバイブルだ。同じESを何十回も読み込んだ。読み込んでいると、そのESの文章がいかに構造化されているかが見えてくるからだ。

それを繰り返している内に、通過するESにはどれにも共通点があった。「明確で論理的なストーリー」「具体的なエピソード」「質問の意図を的確に捉えて答えていること」。この3つだ。最初の一行で質問に答え、その答えを裏付けるための具体的なストーリーが数字つきで語られる。そして最後にそれらをまとめるという形がほとんどだった。質問の意図を的確に捉えて答えるというのは少しイメージしづらいかもしれない。たとえば、自分の短所は何かと聞かれた時に、本当に短所だけを書くのでは足りない。その短所を改善するために何をしているかも書くべきだ(たとえ何もしていなくても)。質問の意図は、自分の短所を把握できる客観性とそれを改善する行動力を見るものだという仮説が立つからだ。これと同じで、自分が苦労した体験や挫折した経験も、自分がそこから何を学んでどう活かしたかを書くべきだ。質問者はなにも君の苦労話に興味があるわけではないからだ。

Webテストは市販の対策本で何回も解いた。難しくはないが、圧倒的に時間が足りない設計だ。慣れていないと京大の院生でも落とされることがある。だから、絶対に準備をしておくべきだ。

これだけ準備をしたおかげもあり、ほとんどの企業では面接まで駒を進めることができた。書類で落とされるのは、何が何でも避けるべきだ。書類で落とされるということは、つまり君には面接する価値も無いと宣告されたということだからだ。僕は誰かにESを添削してもらうことはなかったが、自信がなければ誰かに読んでもらって添削してもらうべきだ。

僕の外資金融就活日記 インターンシップ選考編 1-2 - World Journalに続く。 

外資系投資銀行の現場 改訂版

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